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移動するという選択肢について(熊本地震避難所)

スペシャル企画 2016年5月2日 (月)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

沖縄県立中部病院(元厚労省)の高山義浩先生が熊本県庁で地震対策に尽力されています。いつもながらその正義感に満ちた社会活動には頭が下がります。高山先生は避難所における高齢者を被災地から引き離してはいけないとし、現場を知らずにそのような行為を強要すれば結局高齢者とその家族の利益にならないと論じておいでです(熊本地震の現場から「高齢者を被災地から引き離すべきか」 apitalコラム)。 在宅医療などに造詣の高山先生のご意見には一理あります。しかし、私はそれでも避難所から別の場所に住民が移動していくよう、あらゆる手段を集約して促していくべきであり、高齢者もそうでない方も、大量に避難所にとどまりつづける現状を許容してはならないと思います。 私たちは現地避難所の環境アセスメントを行いました。例えば感染対策という点では多くの避難所が衛生面に気を配り、感染症のアウトブレイクが起きないよう尽力されていました。しかし、ほぼ全ての避難所で達成されていない項目がひとつありました。それは「人と人との充分なスペースが確保」でした。 多くの避難所では沢山の人が肩が触れ合うくらいのわずかな距離の、非常に込み合った状態...