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ジカウイルス感染症――神経親和性が引き起こす多彩な病態像

オピニオン 2016年5月16日 (月)  外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

2015年春以来、ブラジルから中南米、カリブ海、さらに米国領自治区プエルトリコなどに急速に拡大しているジカウイルス感染症は、国内ではジカ熱と呼ばれているが、その病態像は未だ十分に解明されていない。 熱帯地域に分布する蚊の一種であるネッタイシマカが主としてウイルスを媒介するが、国内にも分布しているヒトスジシマカでも媒介される可能性が高い。同属のデングウイルス(デング熱を引き起こす)もこれらの蚊により媒介される。 しかしながらジカウイルスはデングウイルスに比較しても、人に対する病原性が複雑であり、胎児や成人の脳および神経系へも感染し多様な症状を引き起こしている。 そうしたことからWHOは本年(2016年)2月に、公衆衛生上の世界的危機として、ジカウイルス感染症(以後ジカ感染症)への警告を発した。 ジカウイルスは70年前アフリカのウガンダのサルから分離されているが、現在の南米のウイルスはその時点のウイルスから変異していて、人への病原性に変化が出ていると考えられている。 現在のウイルスの病原性は未だ完全に評価できていないが、神経組織に障害を与える神経親和性のウイルスであることが確認されているか...