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私達のカラダの情報と未来

オピニオン 2016年5月29日 (日)  河原ノリエ(東京大学大学院情報学環・学際情報学府 特任講師)

政府の成長戦略「日本再興戦略2016」案の全容が明らかになった。官民で認識と戦略を共有して新たな有望市場を作り出す10個の施策のひとつとして、健康立国が掲げられ、医療データなどの活用による創薬・治療法の開発も謳われている。 言うまでもなく、ここで言うところの創薬・治療法の開発に資する医療データとは、もともとは、誰かの身体からのものである。医学研究における人体由来情報の研究利用は、医療から研究、そして産業(医薬品開発)という円環の流れがなくては、広く社会の益に資することはできないという特殊な性質を抱えるものである。そこには、公益と人権、医療倫理、研究倫理、知的財産などの先鋭な課題が潜んでいる。 人体由来の個人情報を「研究資源」として有効活用することが喫緊の課題となっている。IT技術と遺伝子解析、特に超高速解析装置の解析能力の進歩により、医学研究は新たなステージに入っており、「人体由来の個人情報」のもつ実質も概念も日々大きく変容してきている。特に、その解析能力として注目を集める人工知能が読み解く世界がもたらすものには、測り知れない可能性とリスクが潜んでいる。 人工知能とは人間の脳をモデルと...