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「基幹施設は大学が基本」が招く産科医療の危機

オピニオン 2017年2月7日 (火)  山本佳奈(南相馬市立総合病院研修医)

1年間の開始延期が決まった新専門医制度。日本専門医機構は新しい理事会になったとはいえ、残念ながら根本的に制度は変わっていないようだ。 私は2年間の初期研修を終え、この4月より産婦人科を専攻しようと考えている。専攻医を取得する場合、専攻医研修を開始する時点で日本産科婦人科学学会会員になる必要がある。2017年1月20日、その日本産科婦人科学会は専攻医の配置に関する声明を出した。「全基幹施設を対象に調査した結果、専攻医配置の地域間不均衡の拡大は認められなかった」と。だが、どう拡大が認められなかったのか、声明の中に根拠は全く示されていない。 果たして本当にそうなのだろうか?福島県と神奈川県を例に挙げて議論したいと思う。 私が初期研修を行った福島県の南相馬市立総合病院の産婦人科の常勤医は、たった一人だ。年間約230件ものお産を、常勤医一人でこなしている。一方、福島県立医科大学は常勤医18人に対し、年間分娩数は499件だ(2015年度)。常勤医一人当たりの分娩数はたったの24件である。どちらの施設で研修する方が、より経験を積むことができるかは一目瞭然だ。 だが、南相馬は一人しか指導医がいないため...