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「人間の生きざまをしっかり見てこい」◆Vol.9

スペシャル企画 2017年9月9日 (土)  橋本佳子(m3.com編集長)

――ドイツに留学する前、母校慶應大の研究室の責任医師から言われた言葉がある。 「何?ドイツへ行きたい?まあ、行ってこいよ」「ただな、お前、一生懸命に勉強しようなんて思うなよ。勉強はほどほどでいいんだ。それより日本とは違う世界で、人間がどういう考えで生きているか、人間の生きざまをしっかり見てこい」って、言われた。それは今思うと、本当に大切な言葉だね。 もう一つ、言われたのが、「あまり長居をするな」ということ。やはり言葉の壁はあり、完全に現地に溶け込むのは難しい。ドイツで見て、経験したことを、日本の医療現場に還元しろ、という意味だと理解した。 先輩の言葉は、正解だった。学ぶことは本当に多かった。たくさんの手術を経験した。手術の器具も当時の日本よりとても優れており、「ぜひ日本に持って帰りたい」と思って、ウルム(Ulm)という町にある手術器具メーカーを訪ねたりもした。運転が好きだから、休みの日に、車を飛ばして行っては、日本に持ち帰るために購入していた。 ドイツ時代、手術器具を求めて、ウルムの町へ(提供:石飛氏) 働き方、人生も学んだね。今もそうだけれど、当時も日本人は、「働き蜂」と言われて、働...