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手術にひたすら没頭した20年間◆Vol.14

スペシャル企画 2017年9月14日 (木)  橋本佳子(m3.com編集長)

――労働組合問題も落ち着いた後は、ひたすら血管外科の道を歩んだ石飛氏。そこで力を入れたのが、頸動脈内膜剥離術(CEA)だった。 とにかく「役に立つ医療」をやりたかった。アテローム性動脈硬化症が多い欧米では、脳梗塞の予防策としてCEAが1970年頃から盛んに行われるようになっていたけれども、日本ではあまり手がけられていなかった。ドイツに留学する前の静岡赤十字病院時代、一般外科に所属していたが、脳外科の手伝いをしたこともあり、脳の血流には関心があった。 頭部に流れる頸動脈は、耳のすぐ下辺りで、内頸動脈と外頸動脈の2本に分かれる。脳の血管抵抗は低いので、血液の8割くらいは内頸動脈に流れる。分岐した直後の内頸動脈起始部は、長さ2~3cmの範囲が紡錘型に膨らんでいるため、流速が増した血流では渦流が発生し、「Shear stress」がかかる。この部分が、動脈硬化を来しやすい代表的な部分。ちなみに頸動脈がこんな構造になっているのは人間くらい。猿の頸動脈は内頸と外頸ともにほぼ同じ割合で血液が行き、犬では内頸と外頸の分化すら明確ではない。 1993年の済生会中央病院の運動会。石飛氏は、学生時代から陸上...