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謀反を起こすような人は一緒にはやっていけない【連載小説「朔風」第98回】

スペシャル企画 2017年10月6日 (金)  久間十義(小説家)

[あらすじ・登場人物はこちら] [連載第1回はこちら] 金子市長は約束を守った。しかも迅速に守った。 当選したその夜に大迫院長からの電話を受けて二日後、突然の辞令を出して伊藤事務長を富産別市企画管理室に転出させたのだ。企画管理室は市長直属で、市長の大学時代の同級生で市長が北海道庁から引き抜いてきた倉田総一郎室長(助役待遇)が統括する組織だ。いわば市のヘッドクオーターに当たる。 そこに肩書きなしで転出したということは、周囲からは次のポスト待ちとも、また因果を含めての退職要員とも受け取られる、微妙な立場に伊藤が置かれたということだった。 市長が伊藤に要求したのは、市長選に絡んだバトラー病院の内紛について、洗いざらい市長である自分に告白しろ、ということだった。対立候補である村田元市議側が、バトラー病院事務長だった伊藤を通じて岩村整形外科部長と話をつけ、病院改革を白紙に戻す計画があったことはほぼ確実だった。 「……村田さんの側が」 と金子市長は伊藤に言った。「一時期は大迫院長を更迭して、岩村先生を院長に据える、という腹案を持っていたのは知っている。しかし彼らは大迫院長たちの働きかけで、バトラー...