先生、院長先生がお話になりたいそうです【連載小説「朔風」第108回】
スペシャル企画
2017年11月10日 (金)
久間十義(小説家)
無題ドキュメント [あらすじ・登場人物はこちら] [連載第1回はこちら] 「すみません、先生方!」 山根と健太朗に加えて、後から花島看護部長、事務の都筑君などがやってきて、鳩首して院長の他病院への搬送可能性について話し合っていたとき、CT室の扉が開いて、吉川まゆみから声がかかった。 「ちょっと、この写真をみてください」 中に招じ入れられた山根と健太朗にまゆみが示したのは、パソコンのモニタに映った大迫院長のCT画像だった。 「ちょっと、ここらへんが鮮明じゃなくって、わたしじゃ上手く読み取れないんです……」 「ここか? うーん」 山根が腕組みして首をひねった。明瞭ではないものの、左中大動脈支配領域にちょっと怪しげな黒っぽい影が映っていた。 「これ、確かに脳の腫脹をともなった低吸収域と見えなくもないよね……」 健太朗が言うと、山根はうーん、と頷くようにも見えたが、それでもハッキリとは断定できないのか、その後は口を固く結んで首を振った。 「いま造影剤を使って撮影しています。もう少したったら結果が出ると思います」 とまゆみが言った。バトラー病院のCTでは結果が出て来るには時間がかかるのだという。...
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