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医療の常識通じず、「トイレが握る、血尿は怖くない」◆Vol.15

スペシャル企画 2018年8月15日 (水)  橋本佳子(m3.com編集長)

――ケニア・クワレ地域における住血吸虫の繁殖様式や感染経路などが分かっても、住血吸虫症を疾患として捉え、感染防止に向けた対策を実践するには、住民教育が必要であり、苦労を伴った。 (提供:青木氏) 熱帯医学研究は非常に幅広くて面白いものの、医学・医療、サイエンスだけでは問題は解決しないという壁にもぶち当たりました。理論的には正しくても、それを実践するのは容易ではない、あるいは実践が困難という現実に直面したのです。この問題を解決するには、学際的な取り組みが必要であると考え、私の研究生活の後半は、文化人類学的な視点を導入した研究で研究費をもらうようになりました。 住血吸虫症の感染は、川の淡水産貝が媒介になっているので、理論的にはトイレや水道を作り、「絶対に川に行くな。川の水を使うな。住血吸虫症にかかるから」などと住民教育すれば、インフェクションコントロールは可能です。 そこでクワレの村の5カ所に水道設備を、また小学校にシャワーをそれぞれ設置、プラジカンテル(PZQ)という駆虫薬を用いた集団治療も行いました。その結果、住民の虫卵陽性率は、対策前は60%近くだったのですが、1年後には17%と急激...