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「寄生虫学者より、熱帯医学者と呼ばれたい」◆Vol.26

スペシャル企画 2018年8月26日 (日)  橋本佳子(m3.com編集長)

――熱帯医学の重要性について、熱研から離れて時間が経った今も熱く語る青木氏。 長崎大の熱帯医学ミュージーアムの正面玄関にて(撮影:松村琢磨) 今年3月、東京で開催された日本寄生虫学会大会に参加したら、フランス生まれのアメリカ人が、「フランス政府が予算を付けなくなってしまったために、フランスから寄生虫学者は消えてしまった」と言っていました。現場のニーズに合わない研究をしていたから、政府から見放されたのかもしれません。 私が現役時代、ケニアで一緒に仕事をしていた時、フランス人の有名な住血吸虫症の研究者と出会う機会がありました。彼らが住血吸虫症の流行地に行くというので、私も同行させてもらった。ところが、彼らは、住血吸虫症の患者さんを見るのは初めてであり、患者さんが川で遊んでいたり、洗濯をしていたりしているのを見て驚いていたのです。住血吸虫が寄生する貝も、面白がって見ていました。「へえ、住血吸虫って、こんな場所にいるんだ」と。 その様子を見て、私は「これはダメだ」と思いましたね。彼らは自分たちの感染を防ぐために、住血吸虫症のワクチンを開発すればいいという発想でやっていたのです。そうであれば、動...