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「和田移植」のトラウマ、日本の心臓移植の遅れ◆Vol.21

スペシャル企画 2018年11月21日 (水)  橋本佳子(m3.com編集長)

── 重症心不全治療に向け、小柳氏が補助人工心臓と並んで医師人生をかけたのが心臓移植だ。 心臓移植の術式を犬を用いて開発したのは、米スタンフォード大学のノーマン・シャムウエイ。移植後1年間生存したという論文を発表したのは1961年のことだ。私が榊原外科に入局したのは1963年であり、1964年頃には、シャムウエイの論文を読み、子犬での実験を始めている。その研究歴は長く、私の心臓移植に対する思いは深かった。 その後、1967年春にはシャムウエイが1968年に臨床心移植を開始する予定を発表。しかし、世界で初めての臨床心移植を実施したのは、予告通り南アフリカ・ケープタウン大学のクリスチャン・バーナード医師だった。1967年12月3日のことだ。自動車事故で脳挫傷を受けた24歳の女性の心臓が、54歳の重症冠動脈疾患患者に移植された。しかし、患者は術後18日目に肺炎で死亡。 2例目の移植はニューヨークで行われた。3例目は再びバーナード医師で、移植を受けた患者は日常生活を送るまでに回復、約20カ月生存した。シャムウエイが臨床心移植を実施したのは、翌1968年1月6日になってからのことだった。その年は...