週5日はネット・携帯なしで小説執筆、週1日は医師―医師で小説家・知念実希人氏に聞く◆Vol.3

――今の時代、目指すロールモデルのようなものを持たない若い人は少なくありません。先生も、こうなりたいというモデルのようなものはなかったのでしょうか？ モデルはないですね。自分で、手探りでただやるしかないという感じでした。 2011年に受賞して2012年にデビューしてからは、できる限り小説をメインに仕事をしていきたかったんですが、最初のうちは小説では全然お金になりませんでした。1年間小説を書いても、医師としての月収ほどにもなりません。想像以上に本が売れない世界だということが分かりました。しかも新人なので本当に売れないのが当たり前という世界。だからバイトで医師を続けながらも、だんだん売れてくるに従って、週6日のバイトを週5日に減らして、と1日ずつ減らしていき、小説を書く時間を増やすようにしていきました。最終的には今は父のクリニックを週1日手伝うだけになっています。 ――収入は医師の方が小説家よりも安定していますね。それにもかかわらず先生は小説家を選ばれた。そのモチベーションは。 一生やっていくのに、何がやりたいかということです。一生医師をやりたいか、それとも一生小説を書きたいか、と考えた時...