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患者の行動変容、「ナッジ」が効果的 - 大竹文雄・阪大大学院経済学研究科教授に聞く◆Vol.2

インタビュー 2018年11月6日 (火)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――世界的に見ても、医療の分野に行動経済学の概念を当てはめようという動きは、最近のことなのでしょうか。 はい。特に2010年代以降だと思います。行動経済学を医療に当てはめて考えることで、解決できる問題は多いのではないでしょうか。 治療方針決定の場面で言えば、以前は「医師が言うことが望ましい」とパターナリスティックに進められてきました。その後、インフォームド・コンセントが普及しましたが、「情報を与えるのは医療者で、意思決定するのは患者」、極端に言えば、患者が何を選ぼうと自己責任というスタンスです。行動経済学は両者の中間ぐらいの立ち位置と考えると分かりやすいかもしれません。 行動経済学には「ナッジ(Nudge)」という概念があります。「肘で軽くつつく」、相手の行動を促すためのちょっとしたきっかけを指します。表現の仕方が少しでも違うと、その効果が全然違ってくることは、日常診療でもよく経験されていると思います。 ナッジが患者の選択とどのように関連するかを検討するために、「がん患者への治療において、医学的に治癒を目指すことができなくなった場合に治療を中止するケース」を想定した研究を行いました(共...