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  3. なぜ医師の診療パターンに違いがあるか?- 大竹文雄・阪大大学院経済学研究科教授に聞く◆Vol.3

なぜ医師の診療パターンに違いがあるか?- 大竹文雄・阪大大学院経済学研究科教授に聞く◆Vol.3

インタビュー 2018年11月13日 (火)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――『医療現場の行動経済学』の第3部の全体のテーマは、「医療者の意思決定」です。行動経済学で見られるバイアスは、医師にも見られるのが興味深いところです。 本書の副題は、「すれ違う医者と患者」。この副題を決める際、「すれ違うのは、患者が悪い」という雰囲気があり、共著者の間で議論になりました。しかし、本書で書いている通り、医師側にもバイアスがあり、「すれ違う」の原因は両者にあるのです。 私にとって一番衝撃的だったのは、第3部第10章「なぜ一度始めた人工呼吸管理はやめられないのか」です。医療者が、生命維持治療の中止を躊躇する要因として、「違法性を問われる恐れ」がありますが、実際には10年以上、警察の介入が行われたことはありません。 大竹文雄氏 そもそも生命維持治療の「差し控え」と「中止」のいずれであっても、患者にとっての「利得」と「損失」は本来、変わらないはずですが、実際には医療者にバイアスがかかり、異なって見えるようです。そのバイアスの一つが、「損失回避バイアス」。生命維持治療の「差し控え」では「開始」より生じる損失が、一方で「中止」では「中止」により生じる損失が、それぞれ「避けるべき損失...