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患者からの提訴経験ゼロ、病理解剖も承諾得る◆Vol.18

スペシャル企画 2018年11月18日 (日)  橋本佳子(m3.com編集長)

── 手術症例数の多さや、新しい術式の開発以上に、小柳氏がひそかに誇るものがある。一つは病理解剖の承諾率の高さ、もう一つは患者家族から提訴されたことがないことだ。 自分の人生の最期に、「よくやったよな」と誇りに思えるのは、生涯で実施した手術件数や論文数の多さではなく、病理解剖を依頼して断られた経験がないことだろう。病理解剖の許可を得ることは、医師の仕事としてとても辛い。お亡くなりになって数時間のうちに許可していただかないと、ご遺体の細胞の変化が始まってしまう。ご家族がまだ悲しみの真っ只中にいて、ご遺体にすがって涙を流している時に、病理解剖の許可を得ないと間に合わない。 医学の進歩において病理解剖が果たす役割はまだ大きい。それを分かりやすく説明し、「ご家族の死をもし生かすことができるとすれば、病理解剖をご承諾いただき、私たちに情報をもたらしてくださることだと思う」――。そんな言葉でお願いしていた。 もっとも、病理解剖の承諾を得られるか否かは、どんな言葉で依頼するかではなく、医師と患者側との間に信頼関係があるか否かに尽きる。最期の数日間、医師が懸命に頑張る。その姿をご家族は見ており、一進一...