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現役の医師が「言えない」ことを書く-医師で作家・久坂部羊氏に聞く◆Vol.2

インタビュー 2018年12月1日 (土)  聞き手・まとめ:岩崎雅子(m3.com編集部)

──本書ではさまざまな登場人物が描かれていますが、その中で医師のほとんどが医療の限界を感じています。医療現場で、医師と患者の認識のギャップを感じることはありますか。 それは感じます。患者は皆、「病気を治してほしい、死にたくない」と思っているわけでしょう。つまり「長生きは良いことだ」と思っているし、「医者、医療は万能だ」と思いたい。実際はそうではないので、どこかで折り合いを付ける必要がありますが、医療者は本当のことを言いにくい立場がある。本当のことを言うと自己否定になってしまう、あるいは「その医師がだめなんだ」と患者に受け取られる可能性があるからです。 私は医療現場を離れている部分が多いので、ある意味、現場の医師が言いにくいことを代弁している。 久坂部羊氏 ──『ミンナ死ヌノダ』では、非常に医療に熱心な医師である騏一郎(佑介の曽祖父)が、最後「ミンナ死ヌノダ」と吐き出す。 それが事実、現実なんですよ。騏一郎も最初は一生懸命治療しようとして、やりすぎて、医療に批判的になり、絶望する。私自身の経験と似かよっているところがあります。でも、皆が死ぬことは、本書で書いたように、「決して悪くない」ん...