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「現場を経験したらご都合主義は書けない」-医師で作家・久坂部羊氏に聞く◆Vol.3

インタビュー 2018年12月8日 (土)  聞き手・まとめ:岩崎雅子(m3.com編集部)

久坂部羊氏 ──本書を読んでいて、「どこまでが医療の責任なのか」のラインを引くことが非常に難しいと感じました。 この小説では、難しいということを書いているんです。医師もそうですが、患者さんはその答えを欲しがる。けれどたとえ答えを出したところで、通用する場合と通用しない場合、逆に害毒、弊害が強い場合があるので、難しい。答えはありません。マニュアルではなく、毎回「えいや」で判断していかなければならないし、結果はやってみないと分からない。不確定要素が医療にはある。 答えを求めるというのは、「安全な結果を出したい」という気持ちでしょう。それが問題です。その気持ちを持っている限り苦しみます。ただ毎回ベストを尽くして、後は運を天にまかせるという気持ちを持つのが一番良い対処法だと考えていますし、小説としてもそのようなことが伝わればいいなと書いています。 ──患者だけでなく、医師も「答えを求めたい」と思う気持ちは同じではないでしょうか。 私自身、若い時は外科医として、やっぱり患者を救いたかったんです。大それたことを言うと、「他の医師が救えない患者でも自分は救える」という名医になりたかった。私は大学卒業...