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『愛なくば―少女と医師の苦闘の記録』◆Vol.6

スペシャル企画 2019年2月6日 (水)  橋本佳子(m3.com編集長)

――卒後の進路を考えるきっかけとなったのは、医学生時代に出会った本だった。 大学紛争で授業がなく、本ばかりを読んでいた頃に出会った一冊が、『愛なくば―少女と医師の苦闘の記録』。著者は、九州大学で当時、精神身体医学研究施設(現在の心療内科)教授だった池見酉次郎先生です。池見先生は、日本の心療内科の基礎を築いた草分け的な存在。 一般向けの新書ですが、本当に感動して、私の愛読書となりました。登場するのは、足が動かなくなった少女。原因が分からず、池見先生のもとを受診するのですが、それでも原因が分からない。一番仲良くなった看護師さんがいろいろと話していくうちに、原因は親子関係ではないか、ということになったのです。 弟が生まれたために、両親の愛情がその子に行ってしまったため、かわいがってもらえなくなった。たまたま風邪を引いて寝込んだ時に、両親の愛情を自分の方に取り戻すことができた。「寝ていさえすれば、両親の愛が自分に注がれる」と幼心に思ったのでしょう。そこで医療スタッフが皆で愛情を注いだり、箱庭療法などを時間をかけて行った結果、少女は元気を取り戻し、歩けるようになったのです。「一人の患者さんのため...