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「病気ではなく患者を治療しろ」人生に関わる英国GP

オピニオン 2019年3月2日 (土)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

英国の家庭医の診療所で勤務していると机の上にある沢山の書類、絶え間ない患者からの電話と家庭訪問の要求などで忙殺されそうになることがある。英国の家庭医ひとりにつき登録患者は平均約1500人、フルタイムの家庭医がひとつの診療所に4~5人勤務しているとすると、診療所単位では大体6000~8000人を受け持つことになる。この数には近年大きな変化はないのだが、日本と同様に高齢化社会の到来、そして従来総合病院で診ていた患者を可能な限りプライマリーケア(家庭医)にシフトする長年の政策の結果、家庭医が担当する疾患の範囲は明らかに拡大し、また患者個々の病態も複雑化してきている。 英国では勤務時間が増えることはないが、昨今では社会からの安全性、医療および接遇の質、EBMに対する期待も増し、患者と触れ合う時間が相対的に削られて来ている印象を受ける。診療以外の仕事に忙殺されそうな時には原点に戻り、何故自分が家庭医になったのかを考えることにしていた。 私が2005年に英国ノッティンガム大学医学部を卒業した年に、英国でも研修制度改革があった。従来の制度では研修医が労働者として扱われ教育の側面が不十分であったことが...