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「マニュアルによる安全対策」限界、「レジリエンス」の実装を【平成の医療史30年◆医療事故編】

スペシャル企画 2019年6月4日 (火)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――事故の原因にパッチを当てるやり方には限界があることから、先生は2010年代の初めからレジリエンスという考え方を提唱されています。 私が「レジリエンス・エンジニアリング」という新しい安全マネジメント理論を知ったのは、2009年の南デンマーク大学のエリック・ホルナゲル教授の講演です。「普段うまく行われていることから学び、先行的な対応を取る」という、これまでのアプローチとは真逆の視点に大変衝撃を受けました。ホルナゲル教授は、従来型の安全マネジメントを「Safety-I」、レジリエンス・エンジニアリングに基づく安全マネジメントを「Safety-II」と呼んでいます。 インシデントや事故の調査では、失敗や成功がどのように生ずるのかという「モデル」に基づいて、「分析」が行われます。Safety-Iでは、「失敗と成功の道筋は異なる。失敗には原因があり、それは特定できる」ことを前提にしています。その有名なモデルは、「スイスチーズモデル」です。時間軸に沿ってタスクが順番に行われる中で、エラーが発生した場合に、それを検出しブロックするはずの組織内の防御壁に穴が開いていたために、エラーがこれらの「穴」を...