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英国GPが感じる「患者中心の医療」が必要な理由

オピニオン 2019年6月8日 (土)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

「あなたが一番困っていることは何ですか?」 私はMr.Pという69歳の慢性気管支炎の患者を、かかりつけ医として長年フォローしていた。これまでの説得の甲斐もあり喫煙もやめ、症状は安定していると思っていた。しかし、ある日の朝にいつも通り地域の総合病院から送られてくる紹介状・逆紹介状に目を通していたところ、Mr.Pが息切れを訴え、頻回に総合病院の救急外来を受診していることが分かった。 英国は国民の税収により国営保険サービス(National Healthcare Service; NHS)を運営しており、国民の治療費は原則として無料である。しかし、限りのある公共予算を守り、不必要や過剰な医療が行われないように監視・調整し、費用対効果の高い治療を考えるのも私たち家庭医の仕事だ。このため、総合病院の救急外来の受診頻度をモニターし、家庭医で対応できるような内容であれば家庭医が積極的に介入することになる。私もMr Pに連絡を取り、彼の都合の良い時に受診いただくことにした。 来院した彼に「ご来院ありがとうございます、今日のご気分はいかがですか」と聞いてみると、「あまり良くありません」と床を見ながら一言...