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「医療だけに依存しない英国民、平等から公平な医療へ」

オピニオン 2019年6月22日 (土)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

昨年10月、1年ぶりの英国の街並みを車中から眺めていた。20年以上の年月を過ごし住み慣れた英国の風景も、日本から久しぶりに戻ると随分と懐かしく感じる。まだ10月なのにもかかわらず外に出れば肌寒く、灰色の空とビクトリア朝時代の家が立ち並ぶ街の中をヒースロー空港からホテルにタクシーで向かう中、英国に住んでいた頃の思い出に浸っていた。陽気なタクシー運転手、30歳後半くらいだと思うが、私が英国でかつて家庭医(GP)をしていた話をすると、彼は車内で盛んに咳をしながら私にこう言ってきた。 「君はGPだから聞くけど、昨日から鼻水、喉が痛くて、熱があるんだ。薬局でアセトアミノフェン(解熱薬)を買って、家で休んでいれば良いよね?抗菌薬は必要ないよね?」 風邪やインフルエンザの時に医療機関を受診、処方を希望することの多い日本の患者と接する日々を過ごしていた私は、彼に対する返答に戸惑ってしまった。 英国では、風邪症状、インフルエンザを含めたいわゆるminor ailment (軽傷疾患)のセルフケアと患者教育が徹底されている。学校における教育でも自分で意思決定する力を身に付けることは重要であり、1999年か...