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NICEガイドライン、英国の医療、国民、医療政策にまで浸透

オピニオン 2019年8月12日 (月)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

2014年、まだ私が英国のロンドン西部の街、チズウイック(Chiswick)で家庭医診療所のパートナーになって間もない時の話である。私が良く知っている50代の男性患者が私の部屋に入ってくるなり相談してきた。「私はコレステロールが高いのだけど、この先10年で心筋梗塞や脳梗塞に罹るリスクが何パーセントなのか教えてほしい。コレステロールに対しての薬は必要なのか」と。このような質問で受診する患者はこれで今週3人目だ……と思いながら、患者本人にその理由を聞いてみた。National Institute for Health and Care Excellence(国立医療技術評価機構、略してNICE)の高脂血症ガイドラインの改訂のニュースを新聞で読み、自分も循環器疾患のリスクが高いのか不安になったとのことだった。 NICEは最新のエビデンスだけではなく、医療経済にも基づき医療や介護の推奨をする執行型非政府部門公共機関だ。興味深いのは医療者のみならず、英国民の多くがNICEによるガイドラン(NICEガイドライン)を知っており、関心を抱いていることだ。英国では生活習慣病などのNICEガイドラインが改...