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3人の医師の運命を変えた“熱い夏”

オピニオン 2019年8月30日 (金)  志賀隆(国際医療福祉大学准教授/同大三田病院救急部長)

夏になると、いつも思い出すことがある。初期研修医2年目の2002年、私の運命を決めた“熱い夏”のことだ。ローテーションの中でも「過酷」と名高かった救命救急センターでの2カ月間を過ごした時期。ローテーション後、救急医になる決心をした。そしてこの「熱い夏」は、友人2人の運命をも変えてしまった――。 鋼の肉体を持つ医師との夜 友人の1人目、小児外科志望のA医師とは、救命救急センターのローテーションが一緒だった。彼はラグビーで鍛えた鋼のような肉体を持ち、知力も体力も優れる頼もしい同期。2人で回る2カ月の「センターローテ」は、過酷な修練の場として知られていた。何しろ当直が隔日で回ってくる。「当直明け」か「当直入り」しかない日々である。噂ではあまりの過酷さ故、過去には「研修医が出勤しなくなり、みんなで手分けして探したら、北海道の岬の旅館に泊まっていることが分かった」などといった摩訶不思議なエピソードもあると聞いていた。2人とも緊張しながら、「助け合おうな!」とよく言っていた。救急で一番大変なのも、醍醐味であるのも当直。当直初日の当番はA医師だった。互いに慣れない最初の1週間は、ある程度残ってお互い...