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医療は「権利」それとも「贅沢なもの」?

オピニオン 2019年9月15日 (日)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

私がまだ研修医時代に、ワシントンにある病院に見学に行った時の話だ。どこも最新設備が整っており、綺麗な外観はまるで映画に出てくるホテルのようなイメージ。ここでは高額な医療費が必要なため、この病院でまともに医療を受けられるのは一部の裕福な人のみ。『Health Insurance coverage 2017』の報告によると、アメリカではまだ約2850万の人が医療保険に加入していない。つまりアメリカでは医療とは「贅沢」なものなのだ。無料で医療を提供する福祉国家と言われる英国で育った私にとって、この医療の本質に違和感を感じられずにはいられなかった。 果たして医療とは「権利」なのか、それとも「贅沢」なものなのか。私は興味津々に、同行してくれたアメリカ人の研修医に思い切って聞いてみた。すると平然と彼はこう言った。「あなたは社会主義的な国から来て、自動的に一番高い薬の費用を、国が支払ってくれると思うの?もしそうして欲しいのであれば配給制度を受け入れなければいけないだろうね。なぜなら質の高い医療を全ての人に提供するのは、どの国でも不可能になってきているからね」。思わず「配給制度」と聞いて反論しそうにな...