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薬のフォーミュラリーで医療の標準化を

オピニオン 2019年10月14日 (月)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

私が2017年に英国から帰国し日本の医療現場でまず驚いたことは、処方における「医師の裁量権」の大きさだ。日本では費用対効果がさほど高くない薬であっても、医師がそれぞれの経験や考えによって使用できる範囲が広い印象を受けた。例えば、PPIは日本でも数多くの製品が使用されているが、その中から一つの製剤を選択する基準は、必ずしも明確とは限らない。抗菌薬についても、同じ感染症に対するファーストラインの選択が医師や専門家によって異なることも珍しくないだろう。処方をはじめ医療の裁量権が大きい日本での診療にやりがいを感じるが、必ずしもエビデンスやはっきりとした基準といった治療の標準化が進んでいない状況は、今後日本が医療を持続可能なものとする上で向き合わなくてはならない課題になるかもしれない。 私が以前診療していた英国では処方内容・方法について基準が設けられており、それ以外の使用については厳しく制限されている薬も少なくなかった。家庭医として診療所でPPIを処方する場合、ファーストラインはオメプラールやランソプラゾールといった「費用対効果の高い製剤」をまず選ぶことが標準化されていた。入院患者に対する抗菌薬...