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日本の社会保障「理念がない」- 広井良典・京都大学こころの未来研究センター教授に聞く◆Vol.2

インタビュー 2019年10月15日 (火)  長倉克枝(m3.com編集部)

――『人口減少社会のデザイン』を通して一番伝えたいこと、読み手に受け取ってもらいたいことは何でしょうか。 あとがきに10項目でまとめたのですが、中でも特に大きいのは、10項目の最初に書いた「将来世代への借金のツケ回しを早急に解消すべき」ということです。 これまでの日本社会は結局、昭和の拡大成長モデルの発想の中で全ての問題を解決してくれるという発想で、社会保障や分配の問題などを先送りにして、全部のツケを将来世代に回すということをやってきました。将来世代にツケを回さないようにすることが持続可能性につながります。短期の目先の損得だけでなく、中長期的な持続可能性を考えることが、一番基本になると考えています。 ――本の中で先生は日本の社会保障についてポリシーがなく、その場しのぎだと書かれています。 社会保障の国際比較では、北欧のような高福祉・高負担型、アメリカのような低福祉・低負担型などがあります。私は基本的にはアメリカ型に対してはかなり否定的に書いているんですが、あえて単純に言えば、日本よりはましではないかと思っています。アメリカは低福祉・低負担という道を選択して、個人の自由にゆだねるという明...