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「独善的、軽率な心理」が刑事裁判例の特徴 - 樋口範雄・東大名誉教授・武蔵野大特任教授に聞く◆Vol.2

インタビュー 2020年2月3日 (月)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――中間報告では、刑事裁判例に多い特徴として、「独善的な心理」「軽率な心理」という個人的要素を挙げて整理しています。システムエラーについては議論されなかったのでしょうか。例えば、薬の取り違えでも有罪になり得ますが、非常に多忙な中で、さまざまな要因が重なって、結果的に取り違えになることもあるわけです。 「独善的な心理」「軽率な心理」は、法律家の言葉ではなく、医師や患者さんに読んでもらって、「それはそうだよね」と言えるような概念はないかということで、選んだ言葉です。「独善的な心理」とは、人の言うことを聞かないということ。同僚であれ、看護師であれ、誰かが注意をし、それが記録に残っているのに、本人は「絶対、これでやるんだ」と言って実施し、結果的に有罪になった例が幾つかあります。「軽率な心理」とは、「本来、行うべき行為であると認識し得たはずなのに、その認識を欠く心理」です。 システムエラーへの言及がないのは、一つには中間報告であること、それから今回検討した刑事裁判例は結局、過去の事例であるためです。「この人が悪い」として、個人の責任を問うのが刑事法。これに対して、日本の医療のあり方、特に病院では...