高齢化率がとても高いところでこそ、先進的な取組ができる-志摩市民病院・江角浩安氏(元国立がん研究センター東病院長)◆Vol.4
インタビュー
2020年3月7日 (土)
聞き手・まとめ:高橋直純(m3.com編集部)
――国がん東病院院長時代に感じた矛盾とはどのようなものだったのでしょうか。 ゲノム医療などは、僕もここへ来る直前までそれをけしかける立場でしたが、誤解を恐れずに言えば、ある意味での「バブル」みたいなものです。これまで治すことができなかった病に挑戦することは、もちろん大事で必要なことです。今後も全力で挑戦するべきであると思います。現に、がん医療も不十分ながらも少しずつ進歩してきましたが、これまでの挑戦の結果であることは間違いありません。しかし、今の医療には本質的な問題がありそうだと思い始めました。 僕は医療費が高いから、先進的な治療に対してネガティブな気持ちを持っているわけではありません。逆に金など気にせず、徹底的にやるべきだと思います。すぐにスケールメリットが出て、医療費という点ではそれほど問題ではなくなります。GDPに対する医療費の割合から考えればこの国はまだそれほど逼迫していないはずです。大体過去30年間GDPが全く伸びていないことの責任を医療が取ることはないのですから。 東病院の後に移った東京理科大では大学院生の講義で「死刑囚が胃がんになったらどうするか」ということを毎年、学生に...
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