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日本で直面した処方をめぐる「3つの壁」

オピニオン 2020年3月8日 (日)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

忙しい外来の中、薬剤師からの照会に対応する日ほど、大変な日はない。 ある日、日本のクリニックで私は、典型的なインフルエンザの女性にタミフルを処方しようとした。すると、その患者は「私は以前タミフルを飲んで気持ち悪くなり飲めません」と一言。私は第二選択として使っているリレンザを処方した。次の患者を診ていると、ある町の調剤薬局の薬剤師から電話がかかってきた。リレンザのストックがなくなり、イナビルに変更してほしいとのこと。慌てて患者の合間をぬって、使い慣れないイナビルを処方した。外来を続けていると、薬剤師からまた電話がかかってきた。イナビルはリレンザとは違い1日に1回の吸入でよいことを失念していたようだ。「処方エラー」を指摘され、再度処方を修正した。「普段慣れない薬を処方すると処方エラーのリスクは各段に高くなる」と身をもって感じた日だった。 医療者が知らない「意外と高い処方エラーの危険性」 処方エラーは私たち医療者が想像するよりもはるかに多く起きている。英国のシェフィールド大学の研究によると、処方エラーは英国内だけでも年間約23.7憶の処方で起きると推定されている。その約3割は臨床的にも重大な...