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インパール作戦の軍医だった祖父の思い出

オピニオン 2020年5月24日 (日)  神田橋宏治(医師、DB-SeeD社長)

さて26回目です。今回は中年医師の思い出話です。 僕の田舎は鹿児島にあります。昔はそれなりに栄えていたようですが、今では子供のころのにぎわいもずいぶん少なくなっている武家街です。祖父、神田橋肇は明治の終わりの生まれで、当時で言う韓国の京城帝国大学で医学を学びました。 先日帰省した時、その頃のノートを大事に取ってあるのが何冊も出てきました。各分野について日付と講義の中身が几帳面な字で記されています。ここにお見せするのは臨床内科学の講義ノートです。回虫症の講義であることは分かりますが、あとはほとんど読み取れません。当時はドイツ語交じりの講義でそれを必死に書き取っていた若いころの祖父の姿が目に浮かぶようです。 祖父はその後軍医になりインパール作戦に従事しました。ご存じの方も多いと思いますがこの作戦は日本の大敗に終わりました。従軍した約10万人のうち7~8割が生きて帰ってこられなかったと伝えられています。帰ってくるときの渡河は相当大変だったようで祖父の辞世の句 にもそのときのことが引かれていました。 終戦後は地元で開業し、引退するまでそこで外科医として一生を終えました。幼稚園の頃に見たタイル張...