「熱患者は診ません」は妥当ですか　

「先生までも新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の検査をしてくれないのですね」。そう不満を漏らしたのは、総合診療科の私のもとに紹介されてきた20代の男性だ。最初は倦怠感が4日続き、ガイドライン通り保健所に連絡をしたが、検査の適応ではないと言われたとのこと。地元の診療所４カ所に連絡するもそれら全てから、「できることはないから来ないでほしい」と受診すらできず、さらにもう一つの診療所からは診察はなく、受付で第三世代セフェムの処方箋を渡されたようだった。その後、数日経過を見ても症状が改善しないため、保健所に電話すると「検査の適応ではないので、近くの診療所を受診するように」と言われた。最終的に彼の友人医師に必死で頼みこみ、私への紹介にこぎつけたそうだ。 診察すると不安とうつ病による倦怠感であった。念のために提出した血液検査も正常であり、臨床的にCOVID-19は否定的であった。よくよく話を聞いてみると職場の上司との関係がうまくいっておらず、解雇に怯え、不安で眠れない日々を過ごしているとのことであった。私は患者にCOVID-19ではなく、社会的不安が倦怠感につながっている可能性が高いと伝え...