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薬剤師の調剤行為に関するトラブルと対策

オピニオン 2020年7月5日 (日)  井上雅弘(弁護士)

Q:薬剤師の調剤行為に関する義務について、教えてください。 主に、①処方せんに従った調剤義務、②疑義照会義務、③服薬指導義務(調剤薬の適正使用情報提供義務)に関するものが挙げられます。 薬剤師がこれらの義務に違反すると、民事上、刑事上、行政上の責任を追及される可能性が生じます。 民事上の責任とは、薬剤師が何らかの義務違反によって患者に健康被害を生じさせた場合、その損害を賠償する責任です。金額は健康被害の程度に応じ、患者が死亡した場合等は数千万円以上となることもあります。 刑事上の責任とは、罰金、禁固または懲役といった刑罰を科せられることです。薬剤師法上、①処方せんに従った調剤義務と、②疑義照会義務に違反する行為については罰則規定があります。①の法定刑は「1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金またはこれらの併科」、②の法定刑は「50万円以下の罰金」です。もっとも、これらは故意の場合を対象とするものであり、過失の場合は対象外です。ただし、薬剤師の過失による各義務違反によって患者に死亡や健康被害が生じた場合、業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われる可能性があります。同罪の法定刑は「5年...