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医療の現場に刑事が踏み込むとき

オピニオン 2020年9月12日 (土)  吉峯耕平(田辺総合法律事務所)

近時、介護分野で批判が大きかった刑事事件として、介護施設「あずみの里」での業務上過失致死被告事件があります。介護を担当した職員(准看護師)がドーナツを配布したところ誤嚥によって入所者が死亡したという事件でしたが、職員が起訴され、一審の東京地裁判決は20万円の罰金刑でしたが、7月28日、東京高裁で逆転無罪となりました(『准看護師、高裁は逆転無罪、「あずみの里」事件』を参照)。 もっと注意すれば死亡は避けられたと、後知恵で批難したくなるような事案ではありますが、基本的には、通常の業務を遂行していたところ、運悪く死亡事故が生じてしまった事案だったと言えます。それが、在宅事件とはいえ、刑事罰の対象となったことは、「介護現場の萎縮を招く」として大きな批判を招きました。 「あずみの里」は、医療ではなく介護の事件ですが、医療従事者も他人事とは思えないのではないでしょうか。後述する福島県立大野病院事件など、刑事手続が医療の現場に介入し、医師等の医療従事者が逮捕・起訴される事案が多いというイメージをお持ちの医療関係者も多いと思います。 しかし、実態としては、2000年初頭頃に医療に対する刑事介入が増えま...