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「地図」より「航海」を~ 医学教育に携わる方々へ

オピニオン 2020年11月21日 (土)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

「総合診療は難しいんですよね」 そうもらしたのは私の科に回ってきたばかりのある初期研修医でした。理由は総合診療では一から問診をする臨床推論が多く、体系的に鑑別疾患を挙げていく作業のハードルが高いとのことでした。 この溝を埋めるため、私たち総合診療科では去年から初期研修医が外来患者を診る際に、プリセプティングを導入しました。初期研修医が患者を問診、身体診察、上級医にプレゼンを通して鑑別疾患を述べさせ、ディスカッション形式で一緒に検査や治療を考えていく教育方式です。しかし驚いたのは、日本は優秀な初期研修医が多いのにもかかわらず、こうした「ディスカッション形式の臨床推論に慣れていない初期研修医」が比較的多いことでした。 これは単なるカルチャーの違いなのでしょうか。そうでなければこの違いはどこから来ているのでしょうか。 医学生には「地図より航海をさせよ」 「医学生には地図より航海だね」 これは私が英国の医学生時代に指導医が私に言っていた決まり文句でした。医学教育を船に例えると、地図は「知識」、航海は「実践」といった意味でした。英国では医学生の臨床研修は低学年で始まり、すぐに患者には「stude...