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【フランス便り】ジャガイモとワクチンとかかりつけ医

オピニオン 2021年1月16日 (土)  奥田七峰子(日本医師会総合政策研究機構フランス駐在研究員)

フランスには、パーマンティエというジャガイモ 料理があります。これは種痘接種の推進やジャガイモの普及活動で知られる、18世紀の薬剤師・農学者・栄養学者アントワーヌ=オーギュスタン・パーマンティエにちなんで名付けられた代表的な庶民料理です。 やせた土地でも育成できるジャガイモは1640年代に南米からヨーロッパに持ち込まれ、アイルランドやドイツで主に家畜用飼料として栽培されていました。フランスでは、芽を食べた人の食中毒事例や、球根野菜はハンセン病を起こすと考えられ、1748年に法律でその栽培が禁止されています。1770年代、フランスで飢饉が続き国民に栄養価が高く安く供給できるジャガイモを食用に普及しようとパーマンティエは考えましたが、危険であると激しい抵抗に遭います。 そこでパーマンティエは何をしたか。ルイ16世とマリー・アントワネットにジャガイモの花で作ったブーケを贈り、当時の有名人や宮廷人を招いてジャガイモ料理を出します。たちまちおしゃれでスノッブな流行食になった頃に、御領地ジャガイモ畑を立ち入り禁止にし、昼間だけ銃を持った衛兵に監視させます(夜間は衛兵不在)。 これを見た国民は、どん...