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“割りばし事件”の民事・刑事判決に相違-弁護士・水澤氏  

オピニオン 2008年3月4日 (火)  水澤亜紀子(弁護士・医師)

先日(2008年2月12日)、東京地裁で“割りばし事件”の民事判決が出た。これは1999年7月、男児が割りばしをくわえて転倒、大学病院を受診して処置を受けて帰宅したものの、その翌日に死亡した事案である。 本件について、マスコミ報道だけを読むと、「割りばしをくわえて転倒し、割りばしが頭蓋底に刺さったのなら、脳幹部を損傷して意識障害が出ていただろう、そうすれば診断できたはずではないか」と考える医師もいるのではないだろうか。 しかし、刑事判決によれば、実際の病態は異なる。本件は、男児(当時4歳)が割りばしをくわえたまま転倒し、自分で抜いたものの、割りばしの先端(約7.6cm)が残り、残った部分は頭蓋骨を損傷せず左頸静脈孔にかん入して頭蓋腔に達して左内頸静脈の内腔を閉塞し、同部位から左S状静脈洞や左横静脈洞にかけて静脈内血栓を形成、これが死亡原因となったというものである。 一方、民事判決では、「脳の腫れ及び頭蓋内圧亢進に伴い,最終的に呼吸ないし循環中枢の障害により死亡したと認められるが具体的な機序は不明」と判断している。また、受傷直後は一時的に意識消失があった様子であるが、大学病院を受診した時...