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単純ミスは「重大な過失」か - 弁護士・井上氏

オピニオン 2008年1月15日 (火)  井上清成(弁護士)

1.刑罰適用の第1次的利害関係者 業務上過失致死傷罪(刑法第211条第1項前段)などの刑罰の適用は、医療機関自体に対してではなく、医療者個々人に対して責任追及が行われる。この責任は、法律用語では、「非難可能性」ともいう。日常用語ならば、「反倫理性」と言ってもよい。過失犯としての責任なので、その個々人の「不注意」を非難する。 個々人といっても、病院幹部や開業医が対象になることは稀であり、もちろん病院事務局でもない。主な対象は、勤務医と看護師である。つまり、刑罰適用の第一次的利害関係者は、勤務医と看護師であると言ってよいであろう。 したがって、刑罰適用の問題は、勤務医と看護師がまず中心となって十分に議論することが重要である。 2.刑法の謙抑的適用 総論的議論を行う限りは、医療者でも司法関係者でも、医療に刑法(特に過失犯)が謙抑的に適用されるべきことに対して異論はない。もちろん、謙抑的に適用される前提として、民事的な患者救済としての補償や行政的な措置としての行政処分などが適切に行われるような環境整備も重要であるが、これは様々な議論がなされているので今は触れないこととする。 さて、誰にとっても...