1. m3.comトップ
  2. 医療維新
  3. 大野事件判決 - 医師にとっての臨床上の教訓◆Vol.25

大野事件判決 - 医師にとっての臨床上の教訓◆Vol.25

レポート 2008年8月28日 (木)  水澤亜紀子(弁護士・医師)

1.業務上過失致死罪に関して 業務上過失致死傷罪では、「患者の死亡」といった「結果」の予見可能性や回避可能性を前提として、不注意により、その認識を欠き、結果を回避しなかったこと(注意義務違反)が犯罪行為とされる。 本件では、裁判所は次の通り、患者死亡の予見可能性と回避可能性をともに認めた。 予見可能性・・・被告人は、手術直前には前回帝王切開創への癒着胎盤の可能性は低 いとの認識を持っていたものの、手術中に胎盤と子宮の間に指が入ら ず用手剥離が困難になった時点で癒着の認識を持った。この時点で、 胎盤剥離を継続すれば、剥離面から大量出血し、生命に危機が及ぶ 恐れがあったことについて予見可能性はあった。 回避可能性・・・被告人が胎盤が子宮に癒着していることを認識した時点では、患者の 全身状態は悪くなく、意識もあり、子宮摘出同意の再確認も容易な状 態にあった。手術開始時から子宮摘出手術も念頭においた態勢が取ら れていたこと等に鑑みれば、同時点において直ちに胎盤剥離を中止し て子宮摘出手術に移行することは可能であった。胎盤剥離を中止し て、子宮摘出術等に移行した場合に予想される出血量は、胎盤剥離...