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「患者が他院に移ってしまう」は本当か?

オピニオン 2021年4月3日 (土)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科部長兼国際室室長)

 「辛いんだ」 心の奥から叫ぶように彼は私に訴えてきました。 数年前、まだ私がイギリスでGP(General Practitioner)をしていた頃、日本の友人から一本の国際電話がかかってきました。その友人は咽頭の違和感が続いており、循環器内科や消化器内科であらゆる検査をしましたが、異常は見つからず困り果てていました。話を詳しく聞いてみると、その方は過剰の仕事のストレスもあることが分かり、後日近くの精神科にかかるようにお勧めしました。 精神科の診断は「デパスの長期処方による依存・離脱症状」と、過度の仕事のストレスによる身体症状でした。後に精神科と協力しながらデパスを減量、仕事環境を改善することでみるみるうちに症状は改善しました。「昔の自分を取り戻した」とその後、友人から感謝の手紙もいただき、一緒に喜んだことも覚えています。その彼も今では大きな出世を果たし、まだ現役でバリバリ働いています。 この友人の前医も良かれと思い、ベンゾジアゼピン処方をしたのは間違いないでしょう。デパスはベンゾジアゼピンの中でも薬理的な半減期が短いため、連用後の離脱症状が出やすく、依存しやすいと言われています。...