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池江選手の優勝!元血液内科医として感動しました

オピニオン 2021年4月5日 (月)  神田橋宏治(医師、DB-SeeD社長)

 さて41回目です。 水泳の池江璃花子選手が急性リンパ性白血病からの造血幹細胞移植を克服して、4月4日に開催された日本選手権水泳競技大会の100mの女子バタフライ決勝で優勝してオリンピックのメドレーリレーメンバーとして内定したことがニュースになりました。正直、ものすごくびっくりしました。同種骨髄移植を受けた方がここまで来るとは思わなかったのです。 読まれている方には医師が多いと思うので釈迦に説法になりますが、彼女が受けた同種造血幹細胞移植という方法は、簡単に言ってしまえば免疫細胞を全部入れ替えるという方法です。白血病細胞は何らかの手段で自分の免疫から逃れている、ならば免疫細胞を全部入れ替えてしまえばその手段が使えなくなり白血病を淘汰できるだろう、みたいな結構乱暴な考え方です。 免疫細胞を全部入れ替えるわけですから、副作用も極めて強いです。入れ替えた免疫細胞はほぼ全ての臓器に攻撃を仕掛ける危険があります。これをGVHDと呼びます。GVHDは造血幹細胞移植後から何年も続き、腸や肝臓、皮膚、心臓、肺、筋膜などあらゆる臓器に起きる可能性があります。...