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東大法学政治学研究科教授・樋口範雄氏に聞く(3)◆Vol.33

レポート 2008年10月1日 (水)  橋本佳子(m3.com編集長)

――どんな経緯で、医師法21条に関する弁護側の意見書を書かれたのでしょうか。 大野病院事件の判決のシナリオとしては、3つ考えられました。業務上過失致死罪と医師法21条違反で起訴されたので、(1)両方とも無罪、(2)医師法21条だけ有罪、(3)両方とも有罪、です。 (2)の意味ですが、業務上過失致死罪はなかなか立証ができなかった、犯罪とするほどの過失であるかどうかは、専門家の証人に聞いても分からなかった。しかし、その場合でも、24時間以内に警察に届け出ていないわけですから、医師法21条違反は成立するということです。 業務上過失致死罪が成立するか否かは医学的な問題なので、法学に携わる私の立場としては、(2)が最悪だと思った。だから弁護側から意見書を依頼された際、引き受けたのです。検察は国会答弁などで、「医師法21条違反で起訴するのは、業務上過失致死傷罪の疑いがあるときだけであり、21条違反のみでは起訴しない」と説明しています。つまり、医師法21条違反だけを有罪とするのは形式論にすぎないわけですが、とんでもない裁判官であれば、有罪とすることがあり得た。 ――その前提として、そもそも今回の事件...