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都立病院の産婦人科医の立場から見た妊婦搬送問題(3)- 都立府中病院・桑江氏

オピニオン 2008年11月17日 (月)  桑江千鶴子(都立府中病院産婦人科部長)

何をすればいいのか、という問いは今までにもあり、その解決方法も出尽くしている感がある。しかし最近は、医療崩壊のスピードの方が早いという気がしており、産科崩壊も分水嶺を超えてしまったのではないか、と感じている。いずれにしてもドラスティックな解決法を、しかも早く実行しなければ、日本の産科医療の未来はない。今まで提案されていることの繰り返しになるかもしれないが、重要と考えられる解決方法から列記する。 1.故意による犯罪以外の産科医療事故は刑事免責にする 例えば「脳性まひは周産期周辺での発生は4%しかなく、大部分は胎内で発生しているので、いくら帝王切開率が上がっても、その発生率は分娩1000に対して約2という割合は変わらない」という事実は、産婦人科医には常識であるが、一般人や司法、マスコミにはその知識は乏しい。そういう胎児は分娩時に異常な経過になりやすい。結果が脳性まひであると、「産科医の判断や処置が悪い」「帝王切開が遅れたから脳性まひになった」などとして訴えられて、民事裁判でも負け、医師側には2億円になろうという多額の賠償金の負債が発生する。 医療裁判先進国のアメリカでは、約20年前には今の...