医療の公営化―医療再生の切り札―(下)-京都大学名誉教授・泉氏
オピニオン
2008年9月25日 (木)
泉孝英(京都健康管理研究会中央診療所〔京都市中京区〕理事長、京都大学名誉教授)
「医療の公営化―医療再生の切り札―(上)」では、「医療崩壊」から脱して、「医療再生」を実現するには、「妥当な受診、適切な医療の普及と病院・診療所の適正な配置・運営」実現が必要であることを説明した。これは私的医療機関の話し合いでできることではなく、「医療の公営化、少なくとも病院の公営化は必須」というのが私の提言である。わが国と同様に国民皆保険である英国、スウェ―デンでは、私的医療機関は原則存在しない。医療を公営化し、公的施設の適正配置を行わないと、財政上、維持・運営できないからである。 「医療の公営化」は、実は英国(1948年)、スウェ―デン(1970年)の追随ではない。わが国において、世界で初めて「医療の公営化」が試みられた歴史があるので、紹介しておきたい。 1.日本医療団の設立 明治以来の自由開業医制を基調とするわが国の医療制度は、結果として医療機関の都市集中、地域偏在化をもたらした。「医師の偏在」は今に始まったことではないのである。健康保険の普及していない自由診療の時代、医師の生活は決して楽なものではなかった。収穫期以外、現金収入に乏しい農村での開業を試みる医師は少なく、無医村の存...
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