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医療の公営化―医療再生の切り札―(上)-京都大学名誉教授・泉氏

オピニオン 2008年9月24日 (水)  泉孝英(京都健康管理研究会中央診療所〔京都市中京区〕理事長、京都大学名誉教授)

「医療崩壊」打開のために、様々な議論が展開されている。しかし、根本的解決をもたらすことが期待される提言は皆無である。わが国での実現が極めて困難であることを承知の上で、医療崩壊から脱する唯一の方策、換言すれば「医療再生の切り札」と考えられる「医療公営化」の必要性、そしてその実現を試みた戦前の「日本医療団」について、上下2回に分けて連載し、提言したい。 「医療崩壊」の最大の要因は、増加し続ける医療費に公的負担が耐え得られなくなったことである。1961年の国民皆保険実施以来、2006年までの45年間に国民医療費は4095億円から33兆1276億円(80.9倍)に増加した(厚生労働省国民医療費、OECD ヘルスデータに基づく、以下、同様)。物価上昇、人口増加を勘案しても、国民1人当たりの医療費は10.6倍の増加である。医療費高騰の最大要因は「フリーアクセス(患者はどの医療機関にも制限なく、何回でも受診できる)と診療報酬の出来高払い」による「過剰診療、過剰検査、過剰投薬」である。スウェ―デン、英国などOECD諸国と比較してみると、年間受診回数(入院と入院の合計)は2.7~4.9倍、また人口比で見...