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なぜ育たない日本の先端医療技術産業(上) - 東大医科研・上氏

オピニオン 2009年3月31日 (火)  上昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門准教授)

今年1月骨髄移植フィルターが取り扱いメーカーの撤退で欠品の危機に陥った事態は、患者へ多大な不安を与えた。のみならず、国内生産ができない上に代替品も見つからなかったことなどから、医療機器を巡る状況にも様々な課題を投げかけた。fフィルターの製品サンプルを見て「こんなものが国内で作れないのか」とつぶやいた舛添要一・厚生労働大臣の発言は、現場を知る人たちにとって象徴的な言葉だった。現状のそこかしこに分散している課題を整理すると、この国になぜ先端医療技術を使った医療機器産業が育たないのか、という構造が見えてくる。 1.医療機器産業が育たない日本 産業が育たない。とりわけ治療用医療機器を製造する産業が国内に増えないことは、患者にとってのリスクとなって跳ね返ってきている。 【研究開発】 医療機器の開発から販売までの間には、基礎研究から始まり非臨床研究、臨床研究、治験などを経て薬事申請をし、市販後調査をするという過程がある。しかし、課題は少なくない。 例えば、対象となる症例数が少ない。医療機器を新たに開発する場合、治験データを集める必要があるが、医薬品では数百から数千例集めることが常識であるのに対し、...