最近の学会「肉声が聞こえない」のはなぜ?-松本俊彦・国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長に聞く◆Vol.1
インタビュー
2021年9月17日 (金)
聞き手・まとめ:高橋直純(m3.com編集部)
長年薬物依存症の治療に取り組んできた国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長の松本俊彦氏がこのほど、自伝的エッセイ『誰がために医師はいる: クスリとヒトの現代論』(みすず書房)を上梓した。本に込めた思い、そして今年6月に報告書が取りまとめられた厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」での議論などについて伺った。インタビューには「押しかけ弟子」を自称する、昭和大学精神医学講座講師の常岡俊昭氏(同大附属烏山病院)にも加わっていただいた(2021年8月19日にインタビュー。全3回の連載)。
ある患者は違法薬物を用いて仕事への活力を繋ぎ、ある患者はトラウマ的な記憶から自分を守るために、自らの身体に刃を向けた。またある患者は仕事も家族も失ったのち、街の灯りを、人の営みを眺めながら海へ身を投げた。
いったい、彼らを救う正しい方法などあったのだろうか? ときに医師として無力感さえ感じながら、著者は患者たちの訴えに秘められた悲哀と苦悩の歴史のなかに、心の傷への寄り添い方を見つけていく。
同時に、身を削がれるような臨床の日々に蓄積した嗜癖障害という病いの正しい...
m3.comは、医療従事者のみ利用可能な医療専門サイトです。会員登録は無料です。